コミュニケーション機器の給付制度と人的支援 ~現状と課題~

東京大学先端科学技術研究センター (中部学院大学 リハビリテーション学部)

井村 保 先生

iCare41ただいまご紹介いただきました、井村でございます。

杉原さんと娘さんの非常に夢のある話を聞いて、ちょっと違う内容にした方がよかったと思ったのですけれど、佐藤さんから「コミュニケーション機器の制度とか支援についての問題を」ということだったので、堅い話が多くなるかもしれませんが、今この分野では制度の変わる時期にちょうど重なっていますので、4月以降の動向を見据えて少しお話したいと思います。制度に反映されることとされないことがありますが、現在どういう方向に向かっているのかを説明したいと思います。

いつもこういうお話をする前にイントロとして話させていただくことがあります。佐藤さんが行っているような意思伝達装置もコミュニケーション支援ですが、コミュニケーションとはそもそも何かということを考えることが大事だと思います。

基本は自分と他人の意思の疎通ですが、話して反応が返ってくるといった双方向性が大事だと思います。その時に1人対1人の関係のようにその場の個人個人という2人が分かればいいという話し方や、今私がやっているように1人から大勢に理解してもらう話し方、あるいはグループの中でそれぞれディスカッションするという時にはどういうふうに伝えれば相手に伝わるのか、時と場合によって違う話し方、工夫というものがあります。

社会生活で一般的に我々は自分の思いを伝えていくときに、基本的に話したり書いたりして相手に伝えます。それを聞いたり読んだりすることで理解をしていくわけですけれども、やはりここは双方向性ということを考えます。話すだけ書くだけというように一方向の伝わり方、伝え方だとうまくコミュニケーションとれない。やはり双方向性があって杉原さんが言ったようにお子さんがどういう返事をしてくるか、やったことに対する反応を伺う。そういったことが大事だと思います。

 そうやって、日常生活においても自分の役割を見出すことが大事ですし、そういったところから社会に参加していくと言えます。

実際にどうやって意思を伝えるか、自分の思っていることを伝えるか。コミュニケーションのなかでこれが一番大事な要素だと思うのですが、日常的には言語というものを我々は使っています。話し言葉での音声言語、今見て頂いているような文字などの非音声言語もありますし、それに加わって身振り・手振りを含めたノンバーバルコミュニケーション、言語のいらないコミュニケーションというものがあります。その中でやはり一番手っとり早く伝えることができるのは音声言語であり、日常生活の中で最も有意義につかえる手段だといつも話しています。

 ただ、ちょっとこれにも疑問があるのですね。やはり便利は便利ですけれども、みなさんも携帯電話やメールを良く使いますよね。電話で話すことより書くこと、文字が多くなってきていて、実は話さなくても生活できる日も遠くはないかもしれない。ただそれでも十分に伝わらないことがあるので、あるいは手っとり早く伝えられないので話すということを使っていると考えています。

そのなかでコミュニケーションの障害があるということはどういうことか?今話したような意思伝達に関するところであれば、十分な情報、意思を伝えることができない、声が出ない、文字自体が書けない場合。逆に、相手側とすれば見えない、聞こえない等相手の情報や意思というものを自分が獲得することができない。従来はこういった物理的な障害ということに注目していましたけれども、最近注目されているのは言葉が見えているけれども、言葉そのものの理解ができない、知的な問題とか、失語症なども入るかもしれませんが、言葉というルールを覚えられない場合。それからあるいは発達障害などで他人との協調性がなく言いたいことは言う、でも何も相手の反応を見ることができないという場合。今回お話したいのはこのどちらもできなく、書くことも話すこともできない、伝えることができない場合にどういったコミュニケーションエイドがあるかを話したいと思います。

 実はこういったコミュニケーション障害に対する支援は、昔から盛んだったのですね。聞こえない人、見えない人に対する情報保障が非常に盛んであって、最近では情報を受け取れない人のほうがやっと注目されてきています。

こういった背景をもっておりまして、今日のお話は8項目ありますが、大きくは4つです。まず始めにコミュニケーションを支援する機器、そしてそれに関する制度というものを少しお話します。次のパートでは意思伝達装置と呼ばれるもの、今、全国的にはどういった状況になっているか、それに関する補装具制度、それに関係する問題。後半では、意思伝達装置というものがどのように変わってきているか、あるいはこれからいろんなコンピューター機器、IT機器というものがUD、ユニバーサルデザインですけれども、ユニバーサル化してくる社会モデルの中でどう考えていくべきか。最後に今後、意思伝達装置を使ってどういった支援の体制が必要か、それに対し新しい考え方をしませんかという提案、この8項目についてお話します。このあとのスライドには全部タイトルに番号が入りますけれども、この番号に対応していると思ってください。

 

【1.コミュニケーションの支援する機器】

実際にどういったコミュニケーション機器があるの?何をやりたいの?と聞かれることがあります。だいたい皆さんの考えとして、キーボートを作ればいいよと、そうでなければスイッチと考え始める。今回も作業療法士の方が多くお越しだと思うのですけれども、さっきの話でコミュニケーションというのは他人との意思の疎通です。そうすると、利用者が何をしたいのか、その目的、どういった場面で家族と使うのか、学校で使うのか、いろいろな生活環境の違いというのがあります。実は誰と何をしたいかのコミュニケーションが必要であると。ついついここを飛ばして身体機能の側を評価しがちです。ですから、このあたりをもう一度しっかり注目することが大事だと思います。

機器を紹介したいと思いますが、一番手っ取り早いものって、文字盤、透明文字盤というものがあります。ご存じない方いますか?透明文字盤全く知らないという方?いないですね。説明は省きます。先ほども話が出ていましたが、飛行機のなかなど、電源が使えなくなることは絶対あります。あるいは一言伝えるだけのために電源を入れるより、アイコンタクトでコミュニケーションできないか。目は口ほどにものをいうではないですけれども、まずはこういったもので確実に伝えられる関係がある。表情なんかも大事なのですね。よくいろいろな意思伝達装置、コンピューターを使って画面を見る。画面を見て話を聞いちゃって、話している人の表情を見落としちゃうんですね。透明文字盤は相手の表情を見ながら聞きますから、そういった細かなニュアンスも十分伝わってくると思います。

そういったものが使えないときに代わる方法として、キーボードタイプのコミュニケーションエイドをVOCAと言いますけれども、有名なところでいうとトーキングエイドがあります。文字を押してその文字が画面に出ると同時に音声で読み上げる。50音を作ってあらかじめ登録した定型句、シンボルを使う、などの方法があります。

その他、環境制御装置、息などで操作するリモコンですね。こういうものを使って家電を操作したりします。なぜこれがコミュニケーションかというと、コミュニケーションの目的を考えた時に、たとえば意思伝達装置でも文字盤の上で、家族に来てもらって綴った言葉が、「テレビのチャンネルを変えてくれ」だと、自分で変えられればいいですよね。「そんなことで呼ぶな」と言われる心配ないです。好きな時に好きに変えられます。人と人のコミュニケーションではなく、人と道具のコミュニケーションと考えると、こういったものも生活の中にはあったら便利なものです。

それとともにあるのが、病院でいうナースコールタイプの呼び鈴です。透明文字盤を使ってコミュニケーションをとれるといっても相手が目の前にいないところでは伝えられません。あるいは時間がかかるからといって意思伝達装置などを使ってあらかじめ文を作っておいて見せようとします。ではどうやって見に来てもらいますか。先ほどのようにブザーを使うことによって来てもらい、画面を見てもらったり、介護者が透明文字盤を使って話を始める。不思議に思う人がいるかもしれませんけれども、我々も日常生活で、突然歩いていて後ろから声はかけませんよね。「ちょっといいですか」などと一言かけますね。そういった具合で、まずコミュニケーション双方向性、どちらかが何かボールを投げないと始まりませんから、そうした第一球目になるものだと思います。

次は、パソコンを使って話すこと書くことのできない人が文字を綴る方法です。普通のキーボードを使えない方はこういったスクリーンキーボード、実は私はこうしたことを専門にしているくせに、新しいものがあまり好きじゃなくて、未だWinのXPを使っていますが、こういう画面上のキーボード使って打っていくというものがあります。
 重度障害者用意思伝達装置、伝の心、レッツチャットというもの、一つのスイッチにより文字を綴っていくものです。内容はご存じだと思うので省きます。

意思伝達装置の中で、先ほどは「文字等走査入力方式」と書きましたけれども、こちらは「生体現象方式と呼ばれるもので」、脳波、脳血流などを使ってコミュニケーションをはかろうというものです。生体現象の反応を読み取る装置ですが、スイッチを使えない人に、「今何々して欲しいの?」と聞いて、「はい」か「いいえ」で返ってくる。難しいのは、「はい」と出たら本当に「はい」なのかというと、これがもう1回確認しないと分からないですよね。機械が「はい」と判断しただけであって本当は「はい」かどうか分かりません。だいたい6割ぐらいの正答率言われているのですけれども、怖いですよね。3分の2しかあわないのです。3回に1回は違うことを教えているわけです。「痛いの?」「痛くないの?」あ、痛くないのだと。3回に1回は痛いはずなのです。そうなるとあまり現実的ではないですよね。悪い言い方をすると、介護者は本来わずかな表情を見ながら何となくフィーリングで感じるものがあるのですね。それを自分で納得させるために機械によって間違ってないという安心感を与えるための道具と言っていつも怒られるのですけれども、そういった問題があります。実際これを使っている方もいると思います。

 

【2.障害者・児福祉における給付制度の現状】

こういった6種類の重度障害者用意思伝達装置を紹介しましたけれども、そういったコミュニケーション機器が今、国の制度の中でどう使われるかということについてお話します。

このスライドは3月までしか使えない内容です。ご存じのようにこの4月からは障害者総合支援法になり、少し変わってくると思います。今の制度、障害者自立支援法に基づく福祉用具の給付事業は平成18年10月から始まっていますが、それの前とあとで変わっています。このあと時々、新制度、旧制度と使いますけれども、この時を境にしていることです。

 大きく分けているうちの一つが補装具制度といって、重度障害者用意思伝達装置などが該当するものです。これは自立支援給付制度というものに基づく義務的経費。もうひとつ携帯用会話補助装置などのものは日常生活用具。これは地域生活支援事業の一つの市町村裁量で給付されます。

なかなか一般の方は理解していないというか、正しく認識していない問題ですけれども、補装具が義務的経費ということは、絶対しなければいけない制度。市町村の裁量である地域生活支援事業は、やってもやらなくてもいい制度です。ですので、補装具は日本中どこにいっても使えます。日常生活用具は、何もないところは基本的にありません、やらないといけないものですけれど、ただ何を日常生活用具とみなして、いくらまでの補助をするかというのは市町村裁量権になります。ですからある町にいってOKでも他では駄目ということも起こりうるものです。かつ、この時期、年度末、今年度予算なくなりましたから、4月まで待ってくださいということを、日常生活用具は言っても良い制度です。一方の補装具は予算がなければ補正予算を組んででも対応しなければいけない制度です。ただ実際には書類不備とか言いながら時間を稼ぎ、新年度まで出してくれないところもたまにあるようです。

 こちらについては4月からは総合福祉法の方になっても、基本的には対応は変わりません。

 この違いが何かというと、少し福祉用具のもつ意味合いが変わってくるところです。補装具というのは利用する対象者、個人にあわせて作られたり、調整されているものです。

そのため、障害者手帳、障害種別等級などが対象になっていたとしても、本人が使えるなら支給しましょう。使えなければ支給しません。あるいは必要性があるかないか、そういったところを見られます。

あとは、自立支援法に変わってからですが、現物給付ではなく、表向きは利用者と業者の契約に基づいていったん買い取ったものを9割分あとで還付しましょうということになってきます。日常生活用具も確かそうだと思います。

これまで障害者というのは、障害が固定して永続している、身体障害者手帳を持っている人が対象でしたけれども、4月からの総合福祉法の中では、130疾病+リウマチのいわゆる難病患者さん、身体障害者手帳を持っていない場合でも対象となることになりました。そのあたりが正直言いまして、法律が変わって具体的な問題が起こってきます。多くの障害者のサービスを難病の方が使えるようになります。ではどういう基準で判断するか、それはまだまだ検討中です。補装具に関しては、12日に、厚労省で担当者会議があって市町村、都道府県の担当者に向けての説明会がありますのでそこでかなりはっきりしたことが見えてくるようになると思います。

日常生活用具を少しみます。特徴としては法律上安全かつ容易に使用ができて実用性があるもの。日常生活上の困難を改善し、自立を支援、社会参加を促進する。製作などにあたって障害に関する専門的な知識、技術を要して一般に普及していないもの、この3つの要点を満たすものが日常生活用具としても良いとなりますが、するかしないかは、旧制度では厚労省が決めて、これら日常生活が全国に一斉に広まったのですが、今は各市町村が判断しますので、古い方のものは昔からの名残が残っているのですが、新しいものが入るか入らないかというのは対応が自治体によって変わります。

 これがひとつキーになってきます。用具の製作、改良または開発にあたって、障害に関する専門的知識や技術を要するもの、広く一般に普及していないもの。分かりますか?ユニバーサルデザインのものは、障害者のことを分かって作って障害者には便利です。でも一般の人も使う広く普及しているものだから福祉用具として支給対象になりませんということです。有効に使えるけれども障害者だけが使うものでないものは福祉用具という枠から省きます。その一番良い例がメガネです。メガネは元々福祉用具で作られていますけども、今は福祉用具という扱いではありません。

 実際に日常生活用具にはどういったものがあがるかというと、昔は携帯用会話補助装置が一般的でしたが、今国の基準は6種類の品目だけです。この中に具体的な品目が入るのですけれども、それは市町村の判断です。今あるものに関係するものは情報通信支援用具です。その中に携帯用会話補助装置とかパソコンを使うための周辺機器、情報通信支援用具というものがあります。ただ、具体的なことは市町村によって差があるということだけ理解していただきたいところです。

情報通信支援用具ですが、この背景にあったのは、自民党で当時森政権の頃でしたか、情報バリアフリー化支援事業というのがありました。2000年ミレニアムの時も政府IT5カ年戦略の時に誰もが情報機器、IT戦略ということで障害のある人もパソコンを使えるようにしようということで、視覚障害者と上肢の障害者に対して10万円までの補助事業というのがありました。5年間の次元立法であって、これがなくなった時に、自立支援法ができて日常生活用具に引き継ぎましょうとなったのですけれども、これを便利に使った人も多いと思うのですが、国の制度としてはこれまでに全くない発想でした。

これまでは福祉用具は、もの、完成された製品を「はいどうぞ」というものでした。ここでは、パソコンは普通のものを買ってきてください。自分のもっているパソコンで家族のパソコンでもいいです。パソコン操作にあたり必要な追加部品だけを福祉用具と言いましょうとか、一個の物のここまでは補助するけれどここからは補助しないということを明確にした制度で、今後、多分この数年後にこの考え方が大きく響いてくると思います。ただそれに気がついている人って非常に少ないです。

次に、補装具、意思伝達装置などですが、こちらは身体機能の補完、代替、適合が必要だということ。日常生活、就労のために同一の製品を長く使うもの。使うにあたって専門的な知識をもつ医療者とか医師の診断が必要になると。が要件です。

 先ほどの日常生活用具と何が違うかというと、若干違うところは、その人にあわせるということになってくると思います。買ってきたものを「はい、使いましょう」ではなくて、基本はオーダーメイド、微調整をするということになってくるので、誰でもそれを使うことができない。Aさんに対して渡したものをBさんが使うことができないというのが原則です。日常生活用具の場合はAさんが使ったものをそのままBさんも使えるというものです。 

補装具には何があるかというと、肢体不自由の人に対しては義肢、装具、座位保持装置等。視覚障害者に対しては盲人安全つえ、義眼などがありますし、聴覚障害者に補聴器、あと障害児にはこういったものがあります。旧制度の時、自立支援法が始まる前、障害者は身体障害者福祉法、こども、児童に対しては児童福祉法に基づく制度という違う定義から始まったことの名残です。

今、話している重度障害者意思伝達装置はこの補装具に自立支援法の時も追加されたのですが、肢体不自由と音声言語機能障害、手も動かせず、文字を書くことできず、話す事もできないという重複障害者を対象としているのですね。でも実際に、補装具の判定になると体が動くか動かないかということばかり注目するのです。スイッチが合うか合わないか、そこばかり見ていて生活全体を見落とすことになってしまっている。ここをもう少し認識しなおす必要があると思います。STさんも多く来られているのかと思うのですけれども、コミュニケーションをいうことを考えたいですね。

こういったものの中で少しまとめると、医療機器なども含めての福祉用具ですが、補装具、日常生活用具や高齢者の介護保険の福祉用具の場合もあります。こういったもののなかで、今お話した意思伝達装置が補装具、携帯用会話補助装置とかパソコン等の入力補助装置が日常生活用具でカバーできますというのが現状です。

 

 この意思伝達装置、あちこち取り組みがありますが、なかなか支援者が育たないという問題、佐藤さんもおっしゃっていましたけれども、なぜそういうことがあるかという背景を少し確認して共通の知識として持って帰ってもらいたいと思います。

 

【3.意思伝達装置の導入状況と補装具制度】

こちらは障害者自立支援法に基づく部分です。その他難病患者等居宅生活支援事業の中の日常生活用具というものや、対象者は基本的にいないでしょうけれども、労災保険の中の補装具もあります。

 今制度としてはこの自立支援法が中心で、難病患者の日常生活用具はこの3月で廃止になります。先ほどお話したように、総合支援法の中では難病患者も障害者ということは、障害者自立支援法を改め障害者総合支援法の中で対応するから、改めて別の制度を作ることは必要ないということです。

 労災保険の方ですけれども、おそらく対象と考えるのは事故などで首を折って手が動かなくなり、ちょっとしたミスで声も出なくなったという場合かと思います。自立支援法での補装具、かれこれ5~6年たちましたけれども、どれぐらいか実績を集めてみたのがこちらの表です。

 18年度は年度途中からでしたので移行というか、その前の駆け込みの日常生活判定方法から遅れがあって少ないのですけれども、基本的に19年20年で見ていくと、年間500件前後かな。特例補装具が25ぐらいかなというところです。これは全国の台数です。毎年全国で使う人が500人程度しかいないのです。そういうものに対する支援者というのは全国に何人いるのでしょうね。一人がいたとしても、距離的な問題がありますけれども、そこら中にたくさん支援者がいても、支援者が患者さんに出会うことがない。支援する機会がないから、どう支援していいか分からなくなってくる。そういったところが明らかになる数字であります。

意思伝達装置の利用者というと、ALSの方が多いのですけれども、実際のところどうかは多少データが古く平成20年度までの2年間のデータですが、申請者の件数は、ALSの方が一番多くなっています。全国に対して調査した結果ですが、もちろん全部の回答ありませんが、それを先ほどの統計値からだいたいこれくらいという推測が括弧内です。ALSの方6割、脳血管症、脳卒中などが1割という感じで続きます。これを元に支給金額を計算したこともありますが、国の公表値に近い数で、そうずれた値でもないといえます。

 また、本体支給する時に当然入力装置、スイッチも支給しますが、病状の進行でスイッチが使えなくなった、押しボタンが使えないからもっと違うスイッチを使いたいといったときには変更できるのが補装具の特徴です。その変更にあたる修理申請では、9割がたがALSです。つまり他の病気だとそんなに身体的な変化がないです。一度良いものを見たててあげて支給すると、割と長いこと使えます。これはまさに障害の固定、永続的な利用という補装具の概念に合致するのですけれども、ALSの場合はやはり病状の進行で、一旦支給したといしてもそれが使えなくなってくることがあるわけです。それにどう対処していくかというのが難しいところで、実は国の補装具制度はそういったことを想定して作られておりません。だからこのフォローアップに対する処理がそこでうまくいかないケースがたくさんあります。公費で支給したのに、誰がそれをフォローするのか?システムができていないという問題を示したものになります。

スイッチ、入力装置にどういったものがあるかというものをまとめました。接点式押しボタン、帯電式、タッチスイッチ、筋電式、光ファイバー、呼気スイッチ、圧電素子もありますが、だいたい計算していくとこんな値です。更生相談所に対する調査と利用者に対する調査という2種類の違う調査ですけれども、どちらもほぼ同じ結果だと思うのですが、注目するのはここです。

本体の支給件数とスイッチの支給件数の割合は1.36で、調査期間の2年たたない間にスイッチ交換している人がいます。1年2年するとだいたいスイッチが使えなくなってくる人が多いです。しかもそれはALSの人です。ALSの人が1年ちょっとすればスイッチがあわなくなる可能性がある。2年でだいたいあわなくなる。個人差はありますが。ということは、年に1回はちゃんと「意思伝達装置を使えているよね」「何か困ったら教えてね」とフォロー、チェックをしないといけないわけです。1年以上たって「実はスイッチが使えなくなってコミュニケーションに困ってまいす」という情報発信すらできない状況に陥っている場合もあるわけです。実際のところ、利用者さんにアンケートをとったら、平均14.7年でスイッチ交換していますので、最低年に1回はチェックした方がいいですということを示しています。

 これは余談ですが、従来の情報アクセス、見えない聞こえない障害に対する制度が多くあるのですね。昔から視覚障害者、聴覚障害者で、自分たちは見えない、自分達は聞こえないということを常々コールサインを出して要望していました。その結果良くなりました。意思伝達装置は「自分達は装置が使えなくなる、困っている」と伝えることができないです。行政からみると、無口でおとなしい患者さんなのです。だから制度が遅れてきているのかもしれません。そうすると、支援者がそれを代弁していかなきゃいけない。その時に、「困るんだ、困るんだ」とこういう声を上げるだけでなく、データを元にどういうところが問題でどれぐらいの費用になりそうだということを計量的に値を出して制度を動かしていかないと変わってこないと考えていますので、支援者の方もぜひ自分達から支援先の難病とかが時間数、そういったものを積み上げて、これくらいの支援が必要だということを定量的なまとめ方をして全国で集めることが必要です。だって年間500人しかいませんから。全国集めても500件ですから。そういうものを積み重ねていって、次にどうすべきか考えて行く材料にしたいと考えてください。

スイッチ交換のところです。ちょっと補足ですけれども、当然スイッチの交換によって、よくなったということですが、なかなか変わってないです。病状のタイミングで不要だった場合もあるのかもしれませんけども、中には2年間に5回も変えている人がいる。病状がすごい速さで進行する場合があるのです。交換して使えなかったという場合もあるかもしれない。十分な評価はできてい ない。そのあたりはここからは推測できません。 

スイッチのチェック、入力装置のチェックを誰がするかというと、基本的には病院のOTさんPTさんに頑張って欲しいところですけれども、全国でいろんな支援者がやっているところです。最初の方で補装具というのは全国統一された義務的経費の制度だといったので、本当は全国どこでも同じように補装具としての意思伝達装置が使える必要があります。

ですが、この色分けをみてもらえると、都道府県の違いが分かります。ALSが一番多い意思伝達装置ですけれども、傾向をみる限り、ALSという診断をうけている特定疾患医療受給者証を受けている患者さんに対して意思伝達装置の割合、100人の患者さんのうち何人が意思伝達装置を使っているかというと、おおざっぱな試算ですが、全国平均が14台だったですね。一番多いところは佐賀県です。北海道はここに出てないですけれども、黄色になっているので、かなり少ない方かなと。北海道は広いので札幌と地方では全然状況が違うのかもしれないですけれども、地域によるこれだけの支援の差があるかもしれない。どんな支援があるかないかで差があるのかなということに次に興味が出てきたので、22年度に、高いところと完全に一致はしないのですが、独自にいろんな工夫しているところありますよということで並べてみました。

   

 

実際にどんな人が支援したのというと、家族とか医療者とかありますけれども、この時全国調査とともに宮城県だけ一部調査をしたのですが、傾向が違っていたものがあるのです。全国と宮城県を比較すると、都市部と地方との比較かもしれませんが、宮城県は制度の設計の関係から行政の関与が強いのですね。保健所とか更生相談所とか。都市部になると民間の事業者がけっこう強いのです。理由は簡単です。患者さんがいっぱいいるところはビジネスとしてやっていけるのです。田舎にいくと患者さんが少ないからビジネスモデルが使えない。地方は地方のビジネスモデルを作らないと全国で500人、平均しても一個の都道府県に10人です。5人ぐらいしか年間使わないところの体制ってどう作るのでしょうか。基本的に無理ですよね。ビジネスがだめだったらNPOでも含めた支援の在り方を総合的に作らないと安心して使えないでしょう。行政は一旦支給すれば支給しましたと言います。1年後に使えなくなることが考慮されていないということになります。

 支援のキーパーソン、専門支援機関、更生相談所などですけれども、ニーズはあるのですよね。でも実際に対応できているかというと、対応できてない。頼みたいけれども受け手がないよなというところです。

 スイッチがあわない時って、行く先はバラバラなのです。医療機関に相談したり、訪問リハとか、OTさんが来たり、業者を呼んだりすると思います。となると地域で誰に聞くかというのがポイントで、たまたまその地域で誰が詳しいのかなという個人になっている。そういったこともまた問題でしょうね。ということが見えてくるまとめになっています。

 

【4.支援の充実のための諸問題】

そういったことを含めて支援体制を充実するのにどういう方法があるか。こちらのiCareさんがされていると思いますが、ついつい支援者というのは頑張り過ぎちゃっていますよね。田舎に行けば行くほど、支援者が少ない。私がいなきゃ誰も他に行ってくれない。すべて背負い込もうとするのですね。その結果自分の、能力といったら語弊があるかもしれませんけれども、得意分野、理解しやすい分野を超えてまで違うことを支援している。そうすると、自分は知識がないから勉強しながら支援をしなきゃいけない。そのためにものすごく苦労して、効率が悪くなってしまう。そういうことをやめましょうねと言っているのです。

いろんな人が、多職種と連携してそれで支援することが一番大事じゃないですか。

 例えば、在宅療養を考えた時に、自宅で、家族がコミュニケーションできていないことに気がつかないです。毎日顔をあわせています。アイコンタクトで文字盤も使えます。訪問介護で来る介護職の方、これも微妙ですよね。家族より頻度は少ないので何かちょっと最近うまく装置を使っていないみたいだ。昔は行くといつも機器を使って声をかけてくれたのに、ちょっと最近装置を使ってくれないなと気がつくかもしれない。気がついた時としてもそれはその介護職の人の仕事じゃないです。そうすると、ケアマネさんなどに、「○○さん最近使ってないみたいだけどちょっとどうかな?」と。ケアマネさんは、「じゃあ今度訪問するときについでに体の様子みてよう」と。そうすると「ちょっとレベルが低下しているかな」と。となれば「スイッチ交換が必要かもしれないし、指先とか別に問題なく動いているよ。パソコンの調子悪いんじゃないの」その時にITサポートが入れば役割分担ができます。わざわざOTさんがパソコンを設定する必要はありませんし、パソコンボランティアなどITサポートの人が活躍できます。もちろんOT、PTさんは医学的な知識が豊富ですけれども、患者を無理にサポートする必要はないと思います。お互いに連携して支えていけば、もっと楽なはずですよね。他人の領域まで頑張ってやり過ぎるとお互いに不幸になってくると考えていきたいと思います。

そういうことを見ながら、補装具という枠はこの先どうなるか。導入前と導入後の対応の問題ですけれども、スイッチ操作でコンピューターを使うという意思伝達装置ですけれども、制度上はそれじゃなきゃ使えなくなった時に支給するので、早い段階には機器の必要性がないです。患者さん自身も感じないです。在宅に戻って在宅療養する時に、十分なスイッチが選ばれないまま「困った、困った」。そこでうまく病院なりOTさんとか関わればいいんですけれどもね、けっこうギリギリの相談が来ると、もう他の手段がだいぶ使えない状態で来ると難しい問題があって、操作ができない時に、スイッチがあわなくてできないのか、パソコンの使い方が分からなくてできないのか、あるいはこれは医学的にはMRIで分かるのですけども、脳の機能低下、言語機能の低下などから言葉そのものを理解できなくなっている場合もあったりします。そういったことをふまえて判断せずに、とりあえず意思伝達装置をいれてみようと入れちゃうと、また支援者が、使えない、使えないと苦労すると。やっぱりこれは早い段階でしっかり医学的な評価をしなきゃいけないし、特にSTさんなんかは言葉が出る時に、言い方は悪いですけどもね、将来言葉を失う人に対してその方向へ向けて、こういったことの受容を促すといったら、そう簡単じゃないと言われるのは分かるのですけれども、そういったことを紹介していくも必要かなと考えているところです。

 補装具の対応を考えた時には、進行性で障害固定のない人が同じ補装具、スイッチを使い続ける困難という問題があります。

そこでそれぞれどう介入してどうフォローしていくか。良い時期に支援者が関与しているとサポートがスムーズです。時期を逃してしまうと新たな問題が重なってくるので、苦労することになってしまいます。そういうことを考えていくと、私が考えている一つの図ですけれども、補装具には意思伝達機器だけでなく、義足などもあります。まず足を切断すると医学的な処置があって、医療保険を使っているかもしれないですね、義足、治療用の補装具を作ったり、歩行訓練をしています。これは医療のなかで行っています。それで「これでいいね」という時に意見書を作って補装具の判定をします。自立支援法で補装具を使いました。その後のメンテナンスもやっています。かつ、あわなければ最近足が痛いと言って病院に持って来られます。だから医療と福祉は良い連携ができるわけです。これが従来の補装具のモデルなのです。

意思伝達装置は、病院の中で装置を使う訓練って、しているところもありますけれども、少ないです。OTは福祉用具使用訓練というのをリハビリテーションとして認められています。保険点数が出ますので、OTさんの業務でできます。STさんも言語治療の訓練のなかで装置の紹介や機器の話はしても問題はないです。だけれどもそれをうまくしないまま退院の日がくる。難病関係でいうと保健師さんが関知しているところもありますけれどもうまくいかない。使ってみて使いたくなった。自分から使うといって病院に行くことはできないので、また止まってしまうということで、違うモデルを同じ制度で使ってしまった不幸な結果だと考えることもできるでしょう。                  

スイッチの有効性については、やはりこれ私はリハ職、OT、PTさんを中心ですけれども、頑張ってもらいたいと思っています。けっこう大事なところなので、そこのところ連携しましょう。

 病院にいる間、在宅に戻る時も継続的な支援が必要です。訪問に行った時も最初にお話したように、ここまでは支援対象、ここがITサポートの役割のようにボランティアの支援する分野を見極める。場合によっては何でもかんでも無償ボランティアでなくて、有料であっても支援者確保をする必要があるかもしれない。障害固有のものなのか、パソコンの使い方が分からないのだったら一般的なパソコン講習になり、それは公費負担にはなじまなくなってくるというところがあります。

 支給の判定は、このレベルが下がったときに必要と判定するものです。下がる前に準備しておきましょうということは必要ですね。悪くなってきました。スイッチ交換になりました。ずっと使えるように、使えるゾーンを維持していくというのも目的ですけれども、こういった直前の介入や、フォローがうまくできてないですよと。更生相談所もその対応の差があったりしますし、タイミングを逃すともう使えない。使えなくなったらモチベーションが途切れてしまいます。そうならないように考えることが大事だと、そういう意思伝達装置の支援の仕方が大切だということになってくるわけです。

 

【5.装置と制度の変遷】

後半は視点を変えて、段階的になぜ今、意思伝達装置が必要なのか、なぜレッツチャットや伝の心といった装置が必要なのかということをもう一度考え直すきっかけを少し提供したいと思います。

携帯用会話補助装置が先にあったんですけれども、どういうルーツかというと、やはり文字を書けない人、書けない子どもを対象として電動カナタイプライターというものを使っていたことに由来します。でもキーボードを押さなきゃいけないということで、可動域が少ない人は大変で、1スイッチ型の意思伝達装置に変わってきました。それとともに、脳性麻痺などで発声の障害があるけれども、手がそれなりに動く、不自由はあるけれど可動域はある。そういう時には音声出力を付加したコミュニケーション機器ということでトーキングエイドになってきたり、海外製品のVOCAが輸入されてきました。日本では、ひらがなというものがあるので、ひらがなだけだと十分なコミュニケーションがでないかもしれませんけれども、一応自分の言葉で伝えることができるということでした。

意思伝達装置はどうかというと1スイッチの意思伝達装置というのは、文献を見ていくと1970年ごろとのことです。最近ではパソコンベースに変わっています。

 電動タイプライターをベースにして文字盤をおいてキーボードを作ったり、環境制御装置といったものを使って定型句を入れたりしていました。難病の患者さんなどですと手足が動かないときには、まばたきを読み取るセンサーで入力装置としていたということがありました。

 それがパソコンベースになってくると、環境制御としてのリモコン操作ができるようになりました。最近では通信機能としてメールを使うこともあります。パソコンでいろいろな文章を作成したり絵を描いたりすることもあります。どんどん付加的なことができます。これはパソコンの中でいうと、OSはウィンドウズが有名ですけれども、マルチタスクで同時にいくつも処理をこなせる仕組みができたからです。昔はDOSといって、文字だけで出てくる、1つのことしかできない。同時に複数のことができない時はそういうこともできなかったのが、道具が進化、ツールの進化によってできるようになったところです。

そういう中で生まれた意思伝達装置ですけれども、付加機能が加わったというか変わったというか、専用のハードを使っているかパソコンを使っているかの違いです。意思伝達装置だった製品を、ハードとソフトを切り分ける必要がでてきます。いろいろな操作、環境制御もでき、パソコンも環境制御装置になるのです。車椅子はそう改造しませんからね。付加機能がつくことはそうないですけれども、パソコンはちょっといじれば、どうにでも変わってきて、いろいろな使い道があります。

この図に、機器を重ねてみます。これも制度を考慮したものですけれども、レッツチャットのようなものは専用機器でメッセージを作るというもの。伝の心などはパソコンを使っている感覚でできることが多い複合機。オペレートナビなどは何でもできるけれどソフトだけです。脳波のマクトスでは環境を制御できるというふうに整理できました。

では、制度の変遷はどうでしょうか。意思伝達装置、今は補装具ですけれども、1993年度から日常生活用具でした。携帯用会話補助装置は翌年の94年で、意思伝達装置の方が先だったのですね。なぜかというと、その前にワープロを認めていたからで、書けない人にワープロを使ってもらいましょうと。すると書けない時にキーやスイッチを使うものも当然否定できなくなりました。パソコンはこのワープロに代わって日常生活用具になりました。

 パソコン本体というのは、ワープロ専用機がなくなってパソコンで代用しましたけれども、パソコンにワープロが入っている状況を考えると、普及品なので本体は対象外、日常生活用具で周辺機器のみ。本体という概念がハードウェアという汎用機になってきていると、こういう流れがでてきます。パソコンは非常に変わってきているので、ここはもっともっと今後変わってくるチャンスがあるし、変えていくチャンスでもあるかもしれないでしょう。

実は、ワープロがパソコンに変わった時は、年代的にワープロ専用機がなくなった時です。このときの話ですけれども、ある事件があったんです。福島県の福島市、当時の日常生活用具でワープロがあった時にパソコンを支給したという例があった。不正受給ということになりまして始末書を書くことになりました。でもその時ワープロはほとんどなかったです。どんどん撤退して、パソコンがワープロの変わりとなっていましたが、パソコンの支給が駄目だとなったんです。と言いながらその後これを追認する形で変わりました。現状に制度が追いついてきていないです。ITの進化に制度が追いついてこないんです。何かきっかけがあればどんと変わるということです。

情報バリアフリーで5年間やりましょうと始まった周辺機器ですが、その後は日常生活用具になりました。この時に実はワープロはなくなりましたけれど、ワープロの代わりとしてソフトが出ていました。この付加機能を認めたワープロだと肢体不自由の人だけだしたが、視覚障害者も対象ということで、対象者が広がったということもあります。単純な変化のようにみえるのですけども、裏ではこういうことがありました。今後制度で問題が出たときに過去に一部だけ認めた例があると証拠を出せばいいのです。

それと共に、先ほど意思伝達装置の機能の分類をしましたけれども、あれも最初は明確でなかったものです。補装具に変わった時は意思伝達装置と一つの種目の中にソフトウエアが組み込まれた専用機器とされ、ソフトウエア要件の表す内容が不明確でした。さらに、文字等走査入力方式をパソコンベースで作ったので、何をもって意思伝達か理解できない基準になりました。しかし、実際には製品が選ぶほどなかったので、それで収まっていたのも事実です。

しかし、新しいものが出てくるとそうなりません。平成22年の改訂の時に、大きく文字等の操作入力方式と生体現象方式に区分しました。その時に、文字等操作入力に通信機能が付加され、環境制御機能が付加されたということで、先ほどの黄色と緑の図ですけれども、緑の部分を公的に認めてもらいました。現状として、過去はこんなものは贅沢だという考えでしたけれども、社会の状況を考えると、みんなリモコン使っているじゃないですか。これが使えることで介護者とのコミュニケーションがスムーズになって介護負担が軽減するのに、なんでそれをは除く理由があるんですかということを話しました。

 24年の時にさらにこの環境制御機能、レッツチャットの問題なですけれども、簡易なものか高度なものかという分け方をしました。後追いにはなるのですけども、制度を細かく変更させているのです。それは結局社会の変化で変わってくるというふうになってきます。

どのような理由で、付加機能が認められているかは、このようになっていますので、またお手元の資料を読んでいただければと思います。

 

【6.IT機器のUD化と社会モデル】

そうすると、何が起きるでしょうか。福祉用具だけをみていると視野が狭いですよね。今、世の中には障害者をはじめとして、みんなが使いやすいものがあります。それは、補装具とかに限らない生活支援用具といえます。いろんな便利なものがたくさんありますので、使いにくい装置ばかり使うのでなくて、もっとこっちに目を向けたらどうでしょう、パソコンとかタブレットとか。でもそれって制度で買えますか?と聞かれれば、買えないよとなります。しかし制度を使うよりも、手軽で良い結果がみられる可能性もあります。

それではなぜ制度にのらないかという話になりますが、従来の発想は、ICF(国際生活機能分野)を用いて説明すれば、人間が生活する上での困難、健康状態や活動であったり、体の障害等であったり、昔は体の構造だけを見てできるか、できないかという医学的判断でした。しかし、今はいろいろなものを使えば環境が変わってできること増るという考え方なのです。その中でたとえば、iPad。お子さんが使っていて、もしこれが周りの友達が使っているものと同じものを使えたら、楽しいですよね。学校へいってレッツチャットは使えるかもしれないけども、周りの子はレッツチャット使ってない。自分だけ特別なものを使っている特別な存在とみられているかもしれません。同じiPadなら、友達と違う使い方かもしれませんが、見た目も同じものを持っているので、それはそれでまた一緒という仲間意識が生まれるかもしれないですね。そう考えていくと、結果的にどんどん能力を引き出す可能性もあるかもしれないし、しかも一般のものって安いです。補装具の申請ってけっこう手間がかかってお金もかかったりするので、自費で買った方が早い場合もあるかもしれないと最近私は考えているのです。

何を使ってどうしようというより、何をしたいか、最初にコミュニケーションって何をするのという話をしましたね。目的に戻って、目的達成できるためにもっと手頃なものあれば良いということを考えています。今、私がいる東大の研究室の教授が中村賢龍先生ですけれども、ATACという会で、身の回りにある支援機器をどんどん使っていこうといっています。身の回りにあるテクノロジー“あるテク”をうまく使っていけばもっともっと幸せになるのだということを主張している方で、私も共感しています。

私は意思伝達機器の制度の研究をしています。制度というのは、よくみんな制度が良い悪いという話をしますが、私の立場的なところで言うと、制度を変えてきている立場ですから、問題のある制度は変えていけばいいのと考えています。でも、制度は変えてくれと言っても簡単には変わらないのです。先ほどの表のように、調査して、データを積み上げて、こういう状況だからこれぐらい必要だということを、きちんとまとめて説得できれば、制度が変わります。ですので、支援者の皆さんはお金がない、時間がかかるという愚痴を言うだけじゃなく、愚痴を具体的に積み上げて、じゃあどれぐらいだったら妥当な活動ができるのか、そういったことをまとめてもらって、全国で頑張ってデータを集約すると次につながっていく可能性があると思います。

 そういうことを言いながらも、パソコンを取り扱えないですよね。やっぱり汎用的なものというのは支給対象外でも仕方ないのかなと考えています。既得権的に今までもらっていたものを欲しいという人もいるかもしれませんが、みんなが使っているものを使える喜びと考えた時には、別に制度でなくてもいいでしょうということを私は最近主張しているところです。

 むしろパソコンをもらえないことで時間がどんどん過ぎていく。難病のALSが進行していくと、もっともっと使えなくなるかもしれないです。良いタイミングをみるためにはやはりどこかで線引きしないといけないです。国の代弁じゃないですけれども、財政的に安定はしてないので仕方ないところがあると思います。

 そうすると、本体は削ってもいいでしょうが、その分補助金が減りますよね。余った補助金を支援者の活動費になるようにできませんかと言っています。パソコン本体10万円を支給しなければ支援者に10万円払うことができ、1年間で使えなくなったかもしれない装置が5年間使えるかもしれないです。どっちが効果的な補助金ですかというと、後者になりますよね、ということを最近言っています。

ここでまた難しいことを言いだすので面倒ですけれども、昔の補装具というか日本の福祉というのは、生存権に基づくものでした、25条のところですね。障害者を守る最低限の生活の保障だからそこは公費負担も仕方ないのではという考え方です。最近では幸福追及権に変わっています。とすると、幸福追及権というのは、障害の有無にかかわらずみんなが持っているものです。障害がある人だけにパソコンを給付するとなれば、パソコンを欲しい人は日本中全員ですから、不公平感が大きいという言い分がされています。

 もしこれがそうじゃない、障害者にとってパソコンはどうしても必要なものだということをきちんと理屈で説明できるなら、全ての国民がというか、財政当局が納得できるのであれば変わるかもしれないけれども、多分それはもうありえないでしょう。安いパソコンは3万からある時代です。そんなことにこだわるより、目の前の利益より、もっと長期的に考えていった時には支援者が必要と考えた方がいいでしょう。

 実はここって難しいですね。私は支援者をしながら制度を作るという両方の立場を持っています。これまで補装具の意思伝達装置の中で追加的な機能を認めてきたように、変わるところがあるので、それは社会全体を見て、社会がどう合意形成するかという問題になっていると思います。

ご存じの方多いかもしれませんけども、トーキングエイドという機器が最近iPadのアプリケーションになっています。iPad、キーボードがない普通のパソコンと思えばいいでしょう。タッチパネルで手の力のない子でも文字の手書きもできますし、タッチ入力もできます。ワープロ、パソコン、鉛筆をもてない子がこれを使って文字を書ける。普通に買えばいいんですよね。特殊なものはソフトを入れる。ダウンロードしかできないので制度的には問題になることもありますが、情報通信支援用具でそのソフトは買えるものです。タッチパネルを使いますけれども、キーボードにキーガードをつける事によって、見た目的にはと以前のトーキングエイドと同じものになり、同じ機能を実現できるようになります。さらにこれに外部スイッチをつけると意思伝達装置にもなります。はじめて買ったiPadを長く使うことができます。

結果的に従来はパソコンを使っていて使えなくなりました。トーキングエイド使いました、駄目でした。伝の心になりました。となると装置が変わる度に使い方をもう一度覚え直さなきゃいけないことになります。かつて、脳性麻痺の人が壊れてトーキングエイドを使っているのを見たときに、「新しいものを買えば?」と言ったんです。そうすると「今の製品は音が変わった。この音は僕の声だから声を変えたくない」と。「機械はボロボロでも僕はこの声が好きだ」と話してくれました。なるほどねと。そうやって周りの友達と同じものを自分なりのカスタマイズで使い続けていけるというのがむしろコミュニケーション支援なのかなと。そういった長く使っていくことを考えることも必要かなと考えています。

お子さんの支援もそうです。私はこれに対しても言っています。私事ですけれどもうちも子どもが3人いまして、末っ子が今度小学校に入りますが、どんどん言葉が増えてきましたね。言葉を覚えていく段階に良い道具を使えないと言葉は覚えないです。となると、本当に毎年毎年違うものが変わってくるかもしれないけども、このスライドのような変更は、制度的にはこれは認められないですよね。これをトーキングエイドfor iPadとかを使えば、アプリで変えていけます。画面を触ればいいだけ。そうやって学習的な効果もあがってくるわけなのです。このあたりももう少し考えていかなきゃいけないなと思います。

 さらに制度の矛盾というのもあります。これを使って5年間は壊れるまで使ってくださいっていう発想は、もう違うと思います。あとは、昔はパソコンというのもが高価なので子どもが使うものじゃなかったけど、今の子どもはパソコンを使いますよね。当たり前に使えるものを使っていくということで成長できればいいでしょう。

 こういった道具を使えば、発達障害の回復などにつながったり、むしろメールを使うことによって対人関係もできる。そういったことを今の制度は許してくれない。ただこのあたりも変え時かなと思います。

 

【7.意思伝達装置の継続利用支援体制】

そう考えると、必要な制度って何かなというと、コミュニケーション支援、究極のコミュニケーション意思伝達装置ですけれども、もちろん医療的にいうと、生活全般に関わる問題といえます。

 そのために多職種の連携が必要ですよということです。

                   

 このあたり、少し、はしょりますが、昨年9月にも北海道で講演した時に、北海道新聞に記事を書いていただいています。連携体制と役割をまとめていますので、お手元の資料をご参照ください。

本体は、補装具で上限45万円。支援費用はだいたいこんなものですよね。コミュニケーション支援も手話通訳とかはだいたい1回3千円から5千円くらい。こういった費用かかりながら実は今ボランティアさんたちが、本当に採算があわなくやっているところがあります。都市部であればたくさんの患者さんがいて、利用者さんがいて、効率的に対応できるけれども地方にいくと人も少ないし、常に支援が必要なわけじゃないのです。その割に交通費がかかって効率が悪いということも問題になってきます。

 

【8.新たな支援の枠組みに向けた発想の転換】

これは、支援の原点に帰りましょうというスライドです。意思伝達と、意思伝達支援の制度。でもそれって本当に本質なのと。現状では、既存の道具があり、その制度があり、如何にその型の中に患者さん、利用者さんを押し込むかという支援しかないですね。そうなってくると、世の中をみまわした時に、もっともっと良いものがあるのに、それを見落としてしまうかもしれないのです。

本当に必要なコミュニケーション支援というのは何かというと、コミュニケーションにより、できないことをできるようにしていこうと。そうすると、制度を使うことにしばられなく、もっともっと単純な方法、いろんな人の支援を含めてできることがあれば良いし、支援の実態があれば、実績としてきちんとしたデータが積み上がれば制度はあとで変わってくると思います。

たとえば、スイッチというのもこれまで押しボタンのスイッチでしたけども、生体反応、脳波などを使うものもあります。最近では、国の研究でBMIといって脳波を使うものが盛んに行われています。脳波を使って頭の中で思ったことを文字は出てこないですかと良く聞かれます。頭の中を開いて電極を頭に入れてしまえばできますが、我々はしゃべらないですよね、本音を。それを言ったら多分ケンカになりますよと、いう冗談を話しています。

どんどんいろんなものを使いたい人や、一方で手軽な装置でも良いという人もいますよね。レッツチャットが良いと言う人やパソコンが良いという人。その中で補装具の判定は、今までやっている事ってここ、スイッチを見ているだけです。今の制度的には、意思伝達装置しか認めてないですけれども、意思伝達装置を使う人は呼び鈴だけでいい人、リモコンだけ使いたい人、パソコンを使う人、いろいろなニーズが多分あるはずです。スイッチを何かに使っていて、それをちょっとつなぎ替えれば、意思伝達装置にも使えます。このとき、スイッチの適合は終わっているので、すぐ使えるはずです。このようにすると、100人中全国平均14人しか意思伝達装置を使ってないALSの患者さんですが、ニーズはそんなに少なくないはずです。しかし、今の制度がその普及を邪魔しているのです。自分の持っている自費のパソコンを利用してもいいだろうと思います。これは、情報通信支援用具ではやっていますよね。では情報通信支援用具の何が違うのというと、適合評価が必要なことです。ちゃんと適合しているか、そういったことをみるのが補装具ではないでしょうか?そう考えてください、ということを言っています。

 視線入力装置。これは意思伝達装置として認めているかというと、微妙です。なにが微妙かというと、購入基準の形式の中に文字等走査入力方式と生体反応方式とありますが、これはどちらでもないです。これは制度的に特例補装具というものになり、誰でもがOKではなくて、本当にこれしか使えないことなどを個別に判断して支給になります。札幌でも支給された事例がありましたけれども、多くのところで支給されるかどうかは、なんともいえません。

その他、うちの研究室が作っているOAKというシステムがあります。これもカメラとしてマイクロソフトのキネクトというものを使いますが、エアースイッチといって、画面上でスイッチを描きます。難病の人の動くところを探すツールもあります。あとは顔の動きを見ることができます。まもなくダウンロード販売が開始されますが、今日はビデオでお見せしたいと思います。 

 

<映像> http://www.youtube.com/watch?v=shrR7ka8lMY

  これもまだ制度にのりませんけども、こういったものも導入していく必要があるだろうと。より簡単で使いやすいものを制度にしないことはありません。

我々は何をしなければならないかというと、コミュニケーション支援です。というと、決して意思伝達装置の支援だけじゃないのです。コミュニケーション手段のいろいろなものを試していくことが必要ですし、意思伝達装置も入力スイッチだけではなく、ニーズが変化していきます。だから、従来の発想を転換していかなければならないのです。そういったことには技術も大事ですけれども、いろいろなものを率先して取り入れることが大事だろう。支援者のアンテナを張り巡らすことも大事だと思います。

 

最後は駆け足になりましたけれど、以上で終わりたいと思います。どうもありがとうございました。